箱庭ラビリンス



「……あれ?え?」


「そうじゃなくて、ここはこう」


私の後ろから鍵盤に手を伸ばして教えてくれるのだが、ずっと鍵盤を見つめているからか、どれがどの音か分からなくもなってくる。それに合わせて右手と左手の動きに頭がついていかない。


彼のように出来るとも思っていなかったが、やはり難しい。


……けど、少しだけ彼に近づけた気がする。


そう思うのは愚考だろうか。同じことをしていても遠い思い出のナナギくんには近づけないが彼には、と思ってはいけないだろうか。


分からないが、何より温かい。時折触れる体温が、彼の言葉が、私の心が。


「――……」


一つ間を置いて息を吐き、また音を奏で始めた。