箱庭ラビリンス



彼が見ている風景……と言うには大袈裟だが、彼が居る場所に興味はあった。


けれど、いざそこに行くと何がなんだか。


「ピアノを弾くのは初めて、だ」


白と黒が並ぶ鍵盤を見ながらも軽く触れてみる。冷たくて、でも温かい。


ここに、あの子も座っていた。過去を清算したつもりでも、未だに存在だけは消えないあの子。


「でも、小さい頃ある子が弾いていて、私も弾いてみたいと思った記憶がある」


ナナギくんを思い浮かべると、気付けば円滑に思いを口にしていた。


それにハッとして口に手を当てて、チラリと彼を見ると特に気にした様子もなく「そうなんだ」と口にしていた。


「何弾く?」


「ド、ドレミくらいしか分からないんだが……」


「大丈夫、教えるから。意外と簡単だよ?」


と、彼は笑った。