箱庭ラビリンス



はっとしてからは早かった。菜穂姉に掴み掛かるかの如く腕を取った。二人とも私よりも背が高い為、目一杯背伸びをして。


「な、菜穂姉……!」


「ん?あれ?」


それでようやく気付いたのか惚けた声を上げる始末。


「こっ……困ってる。から」


言いながら彼を見れば、確かに困ったような顔をしている。だが、困っているだけでもないような気がした。


……私には分かりかねるが。


仕切りなおすかのように彼はその表情から笑みを浮かべると、一歩後ろに下がった。


「じゃあ、また明日」


ヒラリと手を振り、菜穂姉に軽く会釈して帰って行く。


私は一瞬遅れたが為に彼の背に小さく手を振ったのだった。