箱庭ラビリンス



ギュッと強く手を握るのが分かった。


「桐谷少年!」


「はい……?」


二回目の呼び掛けとその行動に驚いた顔をしても尚、律儀に返事をする。


困っているのに気付いているのか、多分気付いては居ない為に話すのだ。


「未来ちゃんの近くに居てくれてありがとね」


と。そう言ってガシガシと彼の頭を撫でるのもそうだ。菜穂姉の表情は柔らかくて、優しい。


「!?」


私はなす術もなく、戸惑いを大いに表している彼の髪がグシャグシャになっているのをただ見ていた。


いや、唖然としていた。気付いたのが遅かったと言うだけの話だった。