音楽室から出た廊下は暗い。野球部の練習に使われているライトの光が窓から差し込んではいるが、大した光を運んではくれない。


それくらいにまで眠りこけていたのかと少々恥ずかしくもなった。


「暗いね。望月さんって暗いの平気?」


「あ、う、うん」


「そうなんだ。俺、ちょっと苦手」


あ、今ちょっと笑った。


互いの顔も見えやしないがそれは分かる。見えなくても今はそれでいい。


壁に反響しながら、パタパタと鳴る足音二つ。他に誰もいない。二人だけの音しか聞こえない。


「!」


音を聞いていると、トン、と肩が一瞬彼に触れた。隣り合う距離が近い証拠。


自覚しながらも変えようとはしなかった。変えたくなかったの間違いかもしれないが。