「そ、そんなことない……君には、十分過ぎるくらい助けてもらった。だから、これで良かったんだ。前に……進めるんだ」
ボソボソと呟く声は聞こえたのか。反応のない彼に視線をあげる。
すると目が合うや否や彼は私に向かって微笑んだ。
優しく、なのに泣きそうな顔にも見えた。
「うん……」
返答はそれだけで、後の言葉は無かった。
もう一度彼の顔を見ると、泣きそうな顔など何処にもなく、いつもの笑みだった。
気のせいかと思い、小さく「ありがとう」と呟く。それこそ、聞こえたのか聞こえていないのか分からない声量で。
そして、髪で顔を隠して頬を緩ませた。
私はきっと、回りに支えて貰ってる幸せ者だ。