座った私に対し、いつの間にか前に立っていた彼が私の頬を包んでいるこの状況、驚かない事があろうか。物凄い速さで瞬きを繰り返す。


彼の頭は項垂れていて表情は見えそうにない。だが、手が震えているように感じた。


「……ごめんね」


それと見合うように聞こえてきたか細い声。謝罪の言葉。


「え?ど、どうして君が謝る?」


「……助けてあげられなくて、ごめん」


「そっ、そんなことない!」


気が付けば叫ぶように否定していた。


彼は顔をあげ、先の私と同じように目をパチパチとさせている。


「あ……」


叫ぶ事ではなかったと今度は此方が俯いた。それでも言葉を続ける。