箱庭ラビリンス



今の私がこんな見た目なだけに、視線を思わず逸らす。


とは言え、目が確実に会っているからにはスルーなど出来はしなく、ペコリと頭を下げた。


「こん、にちは……?」


こんにちはと挨拶をする事はあまり無かったので戸惑いつつ言えば、ようやく彼は動き出した。


動揺を隠しきらずに。


「え?あ……こんにちは。その、頬……」


やはり言われてしまうかと苦笑いをし、隠してみようかと頬に触れると少し痛んだ。痛いは痛い。けど悲しくなんかない。


「ちょっと、色々あって……」


「色々?」


心配そうに眉を下げて覗き込んでくる彼に対し、どう言ったものかと思案する。けれど、止めてしまう。


「――良い事、あったんだ?」


こんな姿なのに気付いてくれて、そう言って笑ってくれたから。