箱庭ラビリンス



上手く笑えもしない。適切な言葉も見つからない。だからせめて、目を見つめ、言える一言だけを吐き出した。


「――……母さん。……今までごめんなさい」


なんてチープな言葉だろうか。けれどそれが精一杯の言葉。


こんな時なのに、普段言う事のなかった言葉に気恥ずかしさを覚える。それよりも強いのは情けなさ。子供で、子供のように癇癪ばかり起こした自分への不甲斐なさ。


溢れそうになる涙を堪えても、堪え切れなかった大粒の涙が一粒地面に落ちた。


それと共に包まれたのは、先に一瞬感じた体温と同じ温もり。


「……ううん。私もごめんね。っ、ごめんね……未来。未来」


何度も何度も謝る。私だって何度も何度も口にする。


向き合って、謝りあって、確かめあって。そうして、


「――……帰ろう?母さん」


ここからまた、積み上げていけばいい。遅いだなんて事はきっとないのだから。