嫌だ。崩さないで。これ以上何もしないで。
「お願いだから、止めて……」
遂に目から涙が溢れて、すがるように言っていた。
彼には手を出さないでと願った。優しい彼には何もしないでと。
「ははっ、何それ?――気に食わない」
笑みは消え、一気に目が冷たくなる。私に食らいつくかのように目が捉えて離してくれない。次第に膝が笑い始めた。
伝わる憎悪の感じ。分かる。嫌悪も伝わる。私がかつて向けられたそれと同じだった。
「何でお前にはそうやって誰かがいつも側にいて、何で僕には……っ!」
それは、おおよそ子供染みた癇癪。
「っ!!」
いつかよりも幾分か大きい乾いた音が聞こえた。
――……もしかすると、奴と私は似ているのかもしれない。



