箱庭ラビリンス



壁に背を付けるように私は後ろに下がった。


「細かい事を未来に話すつもりはないけどさ、バラされて僕の人生は一気にぐちゃぐちゃになったんだよ」


そんなもの、私だって同じだ。


あの日、痛がっていた私を無慈悲に置き去りにして、それで皆こんなものかと底が見えてしまったような気がして。酷く人が怖くなって、誰の手も穢らわしく見えて……


『僕に触れるな!』


『自分の事“僕”だなんて、可愛くない』


クラスの人達を払いのければ来るのは、そんな言葉で。


奴に対しての防衛だった女の子らしからぬ行動は、仲間外れにされる格好の的だった。他人は周りと違ったものを嫌がるのだ。そうすれば最後には『女の子なのに』と言われる始末。


どうすればいいのか分からなくて、私は僕が分からなくて。押し付けられる言葉が嫌で。自分が存在すら許されないようで。自分が悪いんじゃないかと。


「何か言ったら?」


「っ、」


考えるほどに怖くなって。


また、暗転した。