箱庭ラビリンス



出来る限りの力で睨み付ける。力なんてない、無駄だと分かっていても止めはしない。


相手は呆れたかのように溜め息を吐き、アパートの戸にもたれ掛かる。少し軋んだ音がした。


「別に、何かをしたい訳でもないよ。ただ、そうだな……僕は初めからお前等が家族として増える事に不満だった」


向けられる目は憎しみに溢れていた。本当に心から嫌いを主張してくる。私と同じ目をしているのだろう。


「他人と住むなんてあり得ない。ましてや馴れ馴れしく智也くんだの智くんだの言われたくもなかった。アホらしいだろう?」


ああ、そうか。私が母さんを拒絶しているようにコイツも私を拒絶しているのか。


けれど。


「……もう、お前とは関係無くなった筈だ。何で私に関わる?」


「言っただろう?よくもバラしてくれたねって」


それは、私に対する恨み。