それを奴に言われてしまえば事実が重くて仕方なくなった。
「あの中学の頃の必死の呼び掛けも信じてもらえなくてさ」
何故知ってる?
「推測だけど、母さんからは連絡とっていた事実を直接聞いてないんだろ?」
何故分かる?
「“菜穂姉が母さんに聞けば”とか“らしい”だなんて、母さん可哀想だな。いや、可哀想なのはお前か。自分を傷つけた奴の家族と母親がまだ繋がってるんだもんな」
ああ、そうか。コイツは頭がよく回るんだ。どんな言動も逃さない。人を観察するのは得意分野だったのだろう。人の事をよく見ていい子を演じていたのだから。
逆を言えば、人の弱い所を突くのも奴にとっては何ら難しい事でもないだろう。
だから、ほら。
「終わることのない悪夢。ってやつ?……ちょっとクサイか。でも、未来は未だに成長してないもんな。変わってない」
クスクスと笑いながら腰を屈めて手を此方に此方へ、左肩へ。動けない私に触れてこう言った。
「肩、もう痛くない?」



