箱庭ラビリンス



恐る恐る探るように鞄から先程の紙を取り出す。


震える手で文字を書けば、彼のようには整わなかったが何とか文字を書き終える事ができた。


『ごめん 桐谷音弥
 君は悪くない謝るのは私の方 望月未来』


今一度、誤字等が無い事を確認してからもとあった場所に置いておく。


こうして何を求めているのかは自分でも分からない。けど、分からなくてもいい。


二つ折りにされた只の紙切れを見つめて立ち尽くしていた。脳は何も考えていない。


「!」


止んだ。昨日と同じように止んだ。


「望月さん。居るんでしょ?」


標準より高めの声。


ビクッと体が勝手に反応し、後退りをした。


幸いなのは彼の姿が見えない事だけ。察するにピアノの所から声を掛けているのだろう。それが唯一の救い。