此方を見るなと言われた為に大人しく前…と言うよりも下を見て歩く。


私は何かをしてしまっただろうか。それとも迷惑を……そう、迷惑なら掛けすぎているほど掛けているのだ。


「……ごめんなさい」


つい口からついてでた言葉。何に対してかと言われれば全部と答える他ない謝りの言葉だった。


「ちが……っ」


それを否定するかのように彼の息遣いは変わった。慌てているようにも聴こえた。


「望月さんが謝るような事じゃなくて……その……言っても大丈夫?」


珍しい光景に目を丸くしてしまうのは仕方ない事だとして、彼は一体何を言うのか想像がつかない。


まだまだ彼を知らない私は分かる筈もなく、でも、聞きたいとは思ったのだ。


頭を上に半分まで上げたところで目を伏せて頷いた。


「その……不謹慎だけど、望月さんが俺の名前、初めて呼んでくれたから、今更ながらに嬉しくて……」


そして、たどたどしく告げられた事にまた目を丸くした。