箱庭ラビリンス



震えが止まっている。と気付けたのは数分程度歩みを進めての事だった。


今更気付くなんて、今まで怖いと感じていた筈なのに不思議で、でも理由等は分かっていた。


安心するんだ。彼が側に居てくれるだけで大丈夫だと思えるんだ。


息を吐き視線を足元からゆっくり上に隣に移動させる。


「……?」


目を合わせたかった訳でもない。合ったら合ったらで気まずい気持ちになるのは目に見えて分かっていたから。


だが、これは目が合う合わないの問題ではなかった。


「あの……?」


「ごめん。今、此方見ないで」


彼は此方でも進行方向でもなく、私とは真逆を向いていた。