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倉庫だった。使われなくなった、草木覆い繁る中に佇む誰も来ない倉庫。
私は何度か兄に連れられて来ていた。強制連行させるには十分狂気的な笑顔を振り撒く兄を鮮明に覚えている。
兄は狂っていた。いや、疲れていた。労う言葉に、誉める言葉に。人当たりがいいだけに数が多く、裁ききれないそれが巻き付いていたのだ。
憂さ晴らし、正にそれだった。
「っ、っ~~」
私は息を殺して命が消えかける音を聞いていた。声を殺し切れず叫べばどうなるか私は知っていた。
喋れない力ない動物を解体して楽しんでいた。怯える私を見て楽しんでいた。
支配されるのではなく、しているのだと喜んでいた。
間違いだと指摘も出来ず私は泣いて怯えて日々を過ごしていたのだ。
ギュッと、痛いくらいに手を握り締めて耐える。また一つ、命が削られた音が聴こえた。



