箱庭ラビリンス



紙を二つに折り、鞄の中に入れた。


そして、廊下だということも忘れて座り込んで耳だけに神経を集中させる。


視覚なんていらない。いらないなら閉じてしまえばいい。


そうしたら浮かぶのは幼いあの子。女の子と見間違う容姿でピアノが上手かったあの子。


「――ナナギくん」


いつでも私に手を伸ばしてくれるのはピアノの音だった。


『未来(みく)ちゃん』


――……あの子も手を伸ばしてくれていたか。


さし伸ばされた小さな手の温もりは微かに覚えている。あの子は今でもこんな状態の私の中を占めていた。


――こんな状態なのに。


なのにどうしてかな?


よく分からないけど音色を聴いているとナナギくんを思い出すからなのか、行動を起こしたいと思ったんだ。