微かに笑う祖母の横顔を見ながら、夏海は早口で続けた。
「Y女の制服着てたから、お嬢さまなんだろうな。気品っていうか、オーラがそのへんの子とは違うもん。天女みたいな感じ。あ、だから天体バカの信ちゃん、織姫様みたいな子を選んだのかなぁ。それにしてもよくあんな子つかまえたよねー。信ちゃんも黙ってたらかっこいいから、今は猫かぶってるんだろうなぁ」
そう言い終わると、今度はこっそり下唇を噛み締めた。
水の流れる音と、食器のぶつかる音がしばらく続く。
黙々と夏海は皿を拭いた。
「はい、これで終わり」
最後の濡れた皿を手渡すと、染みだらけのエプロンで手を拭きながら武子は言った。
「なっちゃんだって、誰にも負けないくらいカワイイよ」
「は?何言ってんのよ。どこが?」
「フランス人形だか、織姫さまだか知らないけど、あんたはこのばあちゃんの孫なんだから、かわいくないわけないだろう?そんなこと言ってたらバチが当たるよ」
カッ、カッ、カッと独特の笑い声を立てると、武子は台所から出て行く。
「そんなこと言ったって…」
最後の一枚の皿を拭くが、どうしてもきれいに水滴が取れない。
湿って重くなった布巾を絞ることも忘れて、夏海は何度も皿を拭う。
「あんな綺麗な子が相手じゃ、勝ち目ないよ」
そう呟き、目頭が熱くなるのを感じて、彼女はまだ濡れたままの皿を棚に戻した。
そしてようやくびしょぬれの布巾に気付き、力いっぱい絞った。
台所から聞こえる孫の鼻をすする音に、武子は辛い表情でアイロンのスイッチを入れた。


