「そこには私の親友が教授を務めていてね。高校の天文部で一緒だったんだ。おもしろいやつだよ、そいつは。もし君が本当に宇宙工学を学びたいのなら彼のところに行くといい。そこは日本でも最先端の研究をしている」
「でも俺…いや僕の学力では到底無理です」
とんでもない、というように信太郎は首を横に振った。
「天宮くん、人生のうちのたった一年や二年、夢を叶えるために使ったっていいじゃないか」
そうは言われても、こればかりは自分一人では決められない。
K大ともなれば家から通うことはできない。
ましてや、今の成績で現役で入れるとも思えない。
そして当然、金銭面で両親の承諾を得ねばならない。
具体的になればなるほど、いくつもの壁を乗り越えねば叶えられない「夢」なのだ。
「…考えてみます」
彼は今の時点でそうとしか答えられなかった。
書斎を出る間際、児玉は最後にこう言った。
「綾乃が私に君を紹介したがったわけがよくわかったよ。あいつは君に夢中だ。一人娘だから甘やかして育ててしまってね。君も苦労するかもしれない。でも言いたいことはハッキリ綾乃に言ってくれてかまわない。それがあいつのためになるんだから。君が愛想をつかすまで、どうぞよろしく頼むよ」
信太郎はそれには何も言わず、頭を下げただけで児玉家を後にした。
「K大か…」
人気の無い電車の中で、信太郎は沈んでいく太陽を見ていた。


