信太郎の溜息にも似た感嘆の吐息に、思わず児玉は笑った。
「話は聞いてはいたが、君は本当に星が好きなんだね。綾乃が妬いてたよ」
「あ、すみません」
勧められて身体が沈むようなソファーに腰を下ろした信太郎は、照れくさそうに笑った。
そのこぼれた笑みを、児玉は娘に対するものと思ったようだ。
「初めてなんだよ、綾乃が男の子の話をしたのは。家内とびっくりしていたら、次は家に連れてきたいと言い出してね。聞けば天体に興味があるというもんだから、すぐ連れてきなさいって言ったんだよ。あー、こうやって君を見てると、綾乃が好きになるわけがわかるくらい君はいい男だよ」
「そんな」と信太郎が座り直したちょうどその時、応接室のドアが開き、綾乃と児玉夫人がお茶と菓子を持って現れた。
「お父さん、私がいないところで変なことを言わないで」
真っ赤な顔をしてティーカップを並べると、彼女は白くて小さな膝頭をきちんと揃えて、信太郎のとなりにちょこんと座った。
児玉夫人はその様子ににっこり微笑むと、手作りの焼き菓子をテーブルの真ん中に置いた。
「変なこととは心外だな。事実だよ、事実」
「もう!嫌なお父さんでしょ?」と彼女はカップを手に取り、信太郎を見る。
「そんなことないよ」
彼も続いて、いただきます、とカップに手を伸ばした。
紅茶を一口飲み、一息ついたところで部屋全体をさりげなく見渡すと、頭上に立派なシャンデリアがぶらさがっていることに気付いた。
惑星の写真に気をとられて、この部屋の一番の見せ場を見過ごしていたのだ。


