「兄妹でデート?」
夏海は目深にかぶったニット帽を少し押し上げて、よく似た目元のふたりを交互に見た。
「まあね」と雅樹は方をすくめる。
小学校の校庭で、豊浜でかき集めた少年野球チームと隣町のチームとの練習試合があるのだと彼は言った。
そして「応援につき合わされちゃって」と付け足す。
「なるほど」
夏海は笑ってうなずいた。
三人は並んで緩やかな坂を下っていく。
「なっちゃんは買い物?」
「うん、魚市場にね。今日は新鮮なハタハタが揚がったって聞いたもんだから、おばあちゃんが塩焼きにしようって」
そう言って、きゃっきゃっと遥と手をつなぎはしゃぐ夏海を見て、雅樹はほっと胸をなでおろす。
ここ数日、ぼんやりとしていることが多かったからだ。
「なっちゃんのその帽子かわいいねっ。自分で編んだの?」
「うん、そう」
遥は兄の雅樹が呼ぶのと同じように、夏海をなっちゃん、信太郎のことシンタローと呼ぶ。
「ね、なっちゃんはお料理もお裁縫も得意なんでしょ?」
小学4年の遥が夏海の手を握ったまま、羨望のまなざしを向ける。
「得意っていうか…しなくちゃいけないから、できるようになったわけで…」
照れたように笑うと、「ほら、私、お母さんいないでしょ?」と言った。
そんな彼女を見つめたまま、遥はつないだ手にますます力を入れる。
「私ね、お願いがあるんだ」


