信太郎に付き合っている人がいると知ってから、数日がたった。
そんな日曜日の昼間近。
夏海は肩に届くか届かないかの、クセのある髪を押さえつけるようにニット帽をかぶり、マフラーに顔を埋めながら坂道を下っていた。
あの日から眠れない日々が続いている。
あんなきれいで大人びた子と付き合っているのだ、と思うと自分の垢抜けなさが嫌になってくる。
彼の隣にいる人は、夏海の憧れるサラサラのストレートヘアで、滑らかな肌とその白さはこの世のものとは思えないほどだった。
その上、あの整った目鼻立ち。
非の打ち所がない。
それに比べて自分は猫っ毛のクセっ毛。
父親譲りのしっかりとした眉に、奥二重の目。
何よりも嫌いなのは、ぽってりとした唇だった。
下唇よりも上唇の方が厚く、そのせいで顔全体の印象としては幼く見えてしまう。
そしてどれだけ食べても肉のつかないスラリとした体型は、みんなには羨ましがられたが、夏海は女性らしさに欠ける体つきだと思っていた。
おしゃべり好きな豊浜のおばさんたちには「町一番のかわいこちゃん」と言われるが、ブーツを長靴と言う人間が大勢いるこんな田舎では、真に受けるほうがバカだ。
かと言って、まんざら悪い気はしないのだが。
「なっちゃん!」
高くてよく通る声が彼女を呼び止めた。
「遥ちゃん!」
声の主が誰だかわかると、沈みがちな彼女の顔がぱぁっと明るくなった。
「こんにちは」
おかっぱ頭がペコリと垂れる。
隣には兄の雅樹もニコニコしながら立っている。


