しばらくすると、「よっし」と気合を入れたかのように彼女は勢いよく立ち上がった。
「行きますか!」
そう言って雅樹を振り返ろうとした次の瞬間、見覚えのある顔が夏海の目に飛び込んできた。
ガラスの向こうで楽しそうに笑っている。
その隣には、さらさらの長い髪の女の子が肩を寄せて座っているのだ。
小さな顔に整った顔立ち、遠目から見てもまるで陶器のような肌をしていることがわかるくらいの、きれいな子だった。
たった一瞬のことなのに、その光景が写真を撮ったかのように頭に焼きついた、いやこびり付いたといったほうが正しいのかもしれない。
雅樹がそれに気付いて、慌てて夏海に駆け寄る。
そして彼女は見てしまったのだ。
そのきれいな女の子が、ふいに彼のジュースに手を伸ばしたかと思うと、ためらうことなくそのストローに口をつけたところを。
ズキンと胸に杭を打たれたような重苦しい痛みが夏海を襲った。
見れば見るほど心が粉々になっていくのがわかった。
だけど、目が離せない。
その時、外からの視線に気付いた彼がこちらを見た。
夏海とその彼の視線が、まるで正面衝突の事故を思わせるようにぶつかる。
「信ちゃ…」
柔らかな唇から漏れた言葉と同時に、雅樹は夏海の目線の先をさえぎるように立ちはだかった。


