二人はいつも16時50分発の豊浜駅行きの電車に乗って帰る。
それを逃すと、次は18時20分まで電車はない。
「ね、マーくんは大学どうするの?」
高校一年生の冬ともなれば、模試の度にある程度の志望大学を記入しなければならない。
大学進学を悩んでいた夏海は雅樹に訊いた。
「俺はW大の医学部を、一応」
「すっごーい!さすがマーくん!」
素直に感心する彼女の様子に照れた笑いを浮かべると、今度は雅樹のほうが彼女に訊ねた。
「なっちゃんはどうするの?」
その問いに困ったような顔をして、夏海は急に足を止めた。
「どしたの?」
ついてこない彼女を振り返ると、その口がためらいがちに「まだ、わかんないのよ」と動いた。
「お父さんは大学行かなくてもいいって。豊浜で就職して、豊浜の人と結婚して、豊浜で暮らせばいいって…」
「結…婚…」
雅樹が唾をごくりと飲み込んだ。
「ほら、うちのお父さんって頭古いでしょ?女がそこまで勉強しなくてもいいって。でもね、私自身、特に就きたい職業とかなくて…だからお父さんの言う通りでもいっかぁって思っちゃうのよね」
えへへ、と笑うと、夏海は休めていた足を踏み出した。
「行こっ、電車乗り遅れたらたまんない」
雅樹を追い抜きざまに、夏海はペロッと舌を出した。


