「愛してる」、その続きを君に


「カノジョって…」


「Y女学園の子でさ、同級生。もう付き合って半月になるかな」


「……」


雅樹の視線が痛いほどに信太郎の横顔に突き刺さる。


「ほら、おまえとは幼なじみで親友だし、一応報告って言うか…」


「なっちゃんには言わないのか?彼女だって幼なじみだろ」


間髪いれずに投げかけられる質問に、信太郎は言葉に詰まった。


「そんな報告だけならメールでも電話でもいいだろ?信太郎、おまえなら絶対そうするはずだよ。でもわざわざここまで俺を呼び出したのはなんでだよ、他に理由があるからだろ」


雅樹にはかなわない、そう思った。


確かにカノジョができた、だけの報告ならメールか電話ですませるだろう。


ただ彼に直接伝えたかった理由は自分でもわかっていた。


夏海がどんな高校生活を送っているのかも気になっていたし、彼女と雅樹との仲に何かしら進展があったかどうかも気になっていた。


とにかく「夏海」のことが気になっていたのだ。


雅樹と二人きりになれば、彼から何か彼女に関して話してくれるかもしれない、そう思っていたのだが、この期に及んで浅はかな考えだと気づく。


「理由なんてない。ただ、俺の自慢を心ゆくまで披露したかったんだよ。めちゃくちゃかわいい子でさ。初めは友達がその子を狙ってたんだけど、俺の魅力で横取りしちゃったってわけ」


信太郎はおどけたふうに喋り続けた。


雅樹もじっとそれに耳を傾ける。


「てなわけでさ、おまえも早くカノジョ作れよ。いいもんだぞ」


そう言って、雅樹の背中をドンッっと勢いよく叩いた。


「あのさ、信太郎」


「ん?」


「なっちゃんには言わないよ」


「……」


「傷付くから」


ハンッと笑って信太郎は雅樹に言う。


「んなわけないって。あいつには関係ないことだろ?言ってもらって結構結構」


「バカ太郎が…」


ぷいっと背を向けると、雅樹は自分がつけた足跡の上をたどるように砂の上を帰っていく。


「ああ、俺はバカだよ」


そんな後姿に信太郎は呟いた。