胸に重苦しさを感じて、信太郎は唸った。


目を開けるとそこには自分に馬乗りになった3、4歳の小さな女の子が笑っていた。


「なんだ、おまえか。ったく、また勝手に入ってきて」


彼がのっそり起き上がると女の子はするするとベッドから下りた。


「ひとりで来たのか」


信太郎が訊ねると、屈託のない笑顔で答える。


「ううん、お父さんとお母さんも一緒」


「またかよ、あいつら」と大きなため息をつくと、信太郎は時計を見やり、ベッドを出た。


午前8時を少し過ぎていた。


階下では食器のぶつかる音がする。


階段を降りながら、「おまえらは泥棒か」と彼は言った。


その後を少女もついてくる。


「おはよう、信太郎」


「ごめんなさいね、落ち着かなくって」


小さなテーブルにトーストやらコーヒーやらを並べていた一組の男女が、さわやかな笑みを称えて顔をあげた。


「ここは俺ん家だ、勝手に入るなってあれほど言ってんのに」


苦笑しながら信太郎は寝癖のついた頭をかいた。