「愛してる」、その続きを君に



何日も何日も、信太郎はベッドに仰向けになっていた。


何も喉を通らない。


思い出したかのように、水を一口含む程度だ。


こんなふうに何も食べずに数日過ごしていると、体が鉛のように重たく、ベッドのマットレスに沈んでゆくようだった。


深い眠りは訪れることはなく、彼は夢と現実の間を常に行き来している状態だった。


太郎はふと自分が人混みの中にいることに気付いた。


ああ、これは夢なのだともわかっている。


ひとり立ち止まっている彼に、見向きもせずに通りすぎてゆく人びと。


肩がぶつかっても無言のまま立ち去ってゆく。


皆一様に無表情で、どこかしら灰色のオーラを放っている。


その中で、信太郎は自分がこの世の誰からも無視されているように思えてならなかった。


孤独感が一気に彼を襲う。


「ナツ」


無意識のうちに彼女の名を呼んだ。


なぜだかこの人混みの中に、彼女がいる気がした。


会える気がした。


「どこだよ、ナツ。おい、返事くらいしろよ」


人をかき分けるように、信太郎は必死で夏海を探す。