「愛してる」、その続きを君に


「天宮くん…だっけ?」


突然、信太郎の対角線上に座る綾乃が小首をかしげながら口を開いた。


滑らかな肌に整ったパーツを兼ね備えた彼女に、世の中の女たちは「神様は不公平だ」と言い合うだろう。


しかし、信太郎には彼女が脆い陶器製の人形のように思えた。


触れると冷たくて、すぐに壊れてしまいそうな…


名前を呼ばれた信太郎は、彼女の次の言葉が出るのを待たずして、一度座り直す。



しばらく時を置いて、「私たちといても、つまんない?」という綾乃のストレートな質問に、コーラを飲んでいた島田がむせた。


「なっ、ゲホッ…何言ってるんだよ。ゲホッ、んなわけ…ゴホッ、ないだろー」


「どうなの?天宮くん?」


島田の言葉を無視して、まっすぐ見つめてくる綾乃の少し茶色がかった瞳を、信太郎はそらすことなく受け止めた。


瞬くとまるで鳥が羽ばたくような音がしそうなほどの、長く濃い睫毛。


そんなことを考えながら、彼はテーブルに両肘をついた。


そして指を組むと、綾乃の真似でもするかのように首をかしげて言った。


「そんなことより、児玉さんのお父さんってさ、何学部の教授なの?」