小さな窓からはオレンジ色の光が射し込むまでになっていた。
どれくらいの時間こうやって彼ら二人は向き合っているのだろう。
信太郎は自らが引き起こした事件を語った。
そしてこれから自分はどうするべきなのか、どうやって被害者遺族、自分の家族、友達、そして恋人だった夏海に対して罪を償っていけばいいのかを全ての思いを言葉に詰まりながらも神父の山根に打ち明けた。
急かすことなく、相槌をうちながら山根は終始穏やかな笑みを浮かべていた。
しかし、信太郎の「俺が死ねば、罪は消えますか?」という問いかけには表情を曇らせた。
「それはあなたの命をひきかえにしなければ、被害者や遺族、あなたのご家族や恋人が報われない、ということですか」
「俺が死ねば、家族は楽になるだろうし、被害者遺族だって納得するんじゃないかって…俺だけ生きてるなんておかしいって、相手もきっと思ってる」
「本当にそうでしょうか」
小首をかしげる山根に、信太郎はうなだれるように続けた。
「正直に言えば、俺自身がもう楽になりたいんです。どうしたらいいのかわからなくて…それに死ねばあいつにも会える」
「あいつ?恋人にですか?」
「ええ、そうしたらあいつのことを忘れずにいられる。このまま生きていたらきっとあいつへの気持ちは色褪せて、いつかは過去の事になってしまう。それが怖いんです」
信太郎の頭の中で克彦の「いつかは夏海のことを忘れてしまう」というフレーズが何度もリフレインしていた。
あの時、即座に否定できなかった自分が情けなかった。
「俺は弱い人間です。ずっと面倒な事からは逃げて生きてきました。だからこれから先、自分にとって都合の悪いことは忘れてしまおうとする…」
薄暗くなった教会の中でしばらくの沈黙が続いた。


