「愛してる」、その続きを君に



駅中のマクドナルドのボックスシートで、信太郎は長い足を持て余すように組んで、外を見ていた。


花田高校の制服を着た生徒が何人も彼の目の前を通り過ぎていく。


あいつはもう帰っただろうか、今なら16時40分発の豊浜行きの電車に乗るんだろうな、と無意識のうちにその人混みの中にある人物を探していた。


「おいっ、来たぞ」


ぼんやりとする信太郎の向かいに座っていた島田が勢いよく立ち上がった。


やれやれ、と遅れて立った彼の前に輝くばかりの女子高生が二人、ニコニコしながら歩いてきた。


男子校の彼らにとって、彼女たちは目を開けているのも困難なくらい眩しい光を放つ。


「マジでかわいいじゃん」


島田の言葉に、まぁな、と信太郎は小さく返す。


「はじめまして。えっと…島田くんと、天宮くん?」


ショートボブの子が足を止め、人懐っこい笑顔を向けた。


「う、うん。俺が島田でこいつが天宮ね、よろしくっ」


どもる友達に信太郎は唇の端を片方だけ歪めると、彼女たちに目を向けた。


すると声をかけてきた子の陰から、胸まであるストレートヘアをなびかせ、もう一人小柄な女の子が姿を現した。


「はじめまして、児玉綾乃(コダマアヤノ)といいます」


彼女はそう名乗って、ペコリと頭を下げた。


髪が揺れ、ふうわりと柔らかな甘い香りが彼らの鼻腔を刺激する。


あげた顔を見て、島田ののどがごくりと鳴ったのが聞こえた。


完璧ともいえるその目鼻立ちに、きめの細やかな肌がまるで人形を連想させる。


そんな彼女に信太郎は眉ひとつ動かさず、「どうも」と軽く会釈をした。