「愛してる」、その続きを君に



雪がアスファルトに落ちる音が聞こえてきそうなほどに、辺りはしん、と静まり返った。


「なっちゃん」


雅樹がたまらず彼女と信太郎の間に入る。


「こいつにもいろいろと考えることが…」


「何?考えって。スバルっていう名前が気に入ったってこと?」


雅樹の言葉を遮り、嫌味たっぷりに夏海は言った。


「まあ、ちょっとなっちゃんも落ち着こうよ」


「マーくんは黙ってて。私は信ちゃんに訊いてるんだから」


雅樹を押しのけると、夏海は信太郎の顔を見据えてもう一度問うた。


「なんで昴高なの?なんで私やマーくんに何も言ってくれなかったのよ」


ポケットに手を突っ込むと、彼は「関係ないだろ、おまえらに」と吐き捨ててその場を立ち去ろうとした。


「待って」


夏海が咄嗟にその腕をつかんだ瞬間、


「うるさいんだよ!いちいち!」


怒鳴り声と共に、彼は夏海の手を乱暴に振り払った。


「俺がどこの高校を選ぼうが勝手だろ!おまえにとやかく言われる筋合いはない!!」


「信ちゃ…」


「だいだい嫌なんだよ、その信ちゃん、信ちゃんってのが!もうガキじゃねぇんだよ!正直うっとうしい!幼なじみだからって…」


目をまん丸に見開いた夏海が、その声の主を見上げた。


こんなに感情をあらわにする彼は初めてだ。


「信太郎、言い過ぎだよ」


雅樹が夏海と同じように、彼の腕をつかんだ。


「俺だっておまえが昴高を本命にしたって聞いて正直ショックだったよ。俺たち何でも話してきただろ?」


信太郎はうっとうしそうに雅樹の手も振り払うと、憎らしげに言った。


「だからぁ、そういうのがもう嫌なんだって。何もかもおまえらに相談しなきゃいけないのかよ。え?俺はさ、おまえらのいない世界に行ってみたいんだよ。毎日毎日さ、同じ顔をつき合わせて…いい加減うんざりなんだよ」


歩き出した彼を雅樹が制する。


「待てよ!そんな言い方…!」


「もういいの!マーくん!」


夏海が悲痛な声をあげた。


「なっちゃん?」


振り返った雅樹が困惑した顔で彼女を見る。