規則的なテンポで落ちる点滴をうつろな瞳で見ながら、夏海は横たわっていた。
夜が明けるのが遅くなり、日が暮れるのが早くなった。
見舞いに来てくれる父、雅樹、綾乃の服装が半袖から長袖に変わっていた。
もう信太郎の事件から2ヶ月近く経っている。
今頃、彼はどうしてるのだろう。
季節の変わり目はよく風をひいて、ガラガラ声になっていたけれど、今年は大丈夫だろうか、そんなことばかり考えてしまう。
夏海自身は抗ガン剤の効果か、病気の進行がいったんは止んだように思われた。
しかし口の中は口内炎だらけで、喋るだけで激痛が走る。
吐き気も昼夜を問わず襲ってくる。
何よりも辛いのは、髪が抜けること。
信太郎がよく撫でてくれたその髪が、日に日に抜けていく。
この頃には克彦も仕事を休み、夏海につきっきりで病室に泊まり込んだ。
雅樹は相変わらず講義に出る前と終わった後に必ず顔を出してくれる。
綾乃は雅樹と顔なじみになり、そろって見舞いに来てくれることもあった。
彼は綾乃が信太郎の元恋人だと知ると「ああ、通りでどこかで会った人だと思ってた」と破顔した。
そして夏海と彼女が親しくしているのが不思議なようで、当初はとまどったように会話に入ってきていたものだ。
点滴が終わり、ナースコールに手を伸ばした父に夏海は静かに問うた。
「…信ちゃんからの返事、届いてない?」
「まだ来てないみたいだけど…」
「なんで返事くれないのかな」
「信ちゃんも裁判とかいろいろあって…余裕がないんだろう」


