素早くそれを封筒に入れ直すと、信太郎は目の届かぬところへと隠すようにしまった。
何かに怯えたように。
彼女の影を消そうとするかのように。
取り調べを担当した若い刑事が言った。
「きっと彼女は待っててくれる」と。
確かにあの時は「待っていてくれ」と願った。
だから自分なりにきちんと罪を悔い改めて、夏海のもとへ戻りたかった。
しかし、今は違う。
待たないでくれ、と心底思う。
こんな自分を待たないでくれ、と。
たとえ法律上での「罰」が終わっても、決してこの身に課せられた罪は消せないのだ。
それを一生、この命が尽きるまで背負っていかねばならない。
夏海の元に戻るということは、それを彼女にも強いるということだ。
そんなことはできない。
愛する人を巻き込むわけにはいかない。
彼は手のひらを見つめた。
指にからめたあの柔らかな髪の感触が、未だに生々しいほどに残っている。
忘れなければ。
そして忘れてもらわなければ…
それ以降、夏海から届いた手紙を信太郎は読むことはなかった。
ただただ、裁判が結審する日を待っていた。


