そんなキャッキャッとはしゃぐふたりのもとに、看護師が3人組で突然でやってきた。
「佐々倉さーん、申し訳ないけどお部屋引っ越しまーす」
イヤホンを外しながら、夏海は「今からですか?」ととまどう。
「今からお荷物移動させるね」
有無も言わさぬ看護師たちのてきぱきした動きに、綾乃はただ後ろに下がって見ているだけだった。
「あらまぁ、急ね」と寂しそうに千鶴は夏海を見遣る。
「ごめんなさいね。この病院は患者さんの出入りが激しくて。佐々倉さんは若いから引っ越しの体力あるでしょ?」
そんなことを言いながら、看護師たちは手早く荷物をまとめる。
「ベッドのまま移動しますよ」
「え!このまま?」
あっという間に、夏海を乗せたベッドは看護師たちの手によって廊下に押し出された。
「また遊びに来ますから」
千鶴への挨拶は、そう言うのが精一杯だった。
曲がり角でもぶつけずに器用にベッドを押してゆく。
小柄な綾乃は荷物を運ぶのを手伝うと言って、夏海のベッドの脇を小走りでついてきた。
「お部屋が替わっても、遊びに行ってもいい?」
「うん、絶対に来て」
新しい部屋は個室だった。
トイレも洗面台も部屋についている。
「個室?どうして個室なんですか?」
「空きがでたのよ」
無理のある説明だと思った。
個室を希望した覚えはない。
先ほどと同様、荷物を手早く片付けてゆく看護師たち。
ものの数分で「後で点滴があるからね」という言葉だけを残して部屋を出て行った。


