「ありがと、本当にありがとう」
「じゃあ…」
身を乗り出した綾乃に、夏海はかぶりを振った。
「でもね、信ちゃんはそれを望んでいないんだって…。何の反論もせずに、何もかも受け入れるって…」
綾乃の大きな瞳が凍り付くのがわかった。
「つまりそれは…」
「減刑を望んでないんだって」
彼女不思議な色を放つ瞳が、ゆっくりと左右に揺れた。
そして長いまつげがその瞳を覆い隠すと、彼女は「そうなんですか、でもわかるような気がする」と声を詰まらせた。
長い長い沈黙が二人の間に流れた。
テーブルの上に置かれた彼女たちの手がいつしか近づき、強くお互いを握りしめていた。
相手の手を包み込むように、強く、強く…
泣いていた。
夏海も綾乃も。
たった一人の青年を想って、彼女たちは涙を流していた。
「信ちゃんらしいでしょ?こういうところだけはバカ正直で。変なところで逃げも隠れもしないんだもん」
「…ほんとに。ほんとにそうね…」
「児玉さん、信ちゃんがそういう性格だって知ってた?」
「もちろん…私だって一応恋人だったんだから」
「なぁんだ、悔しがるかと思ってたのにな」
顔がぐちゃぐちゃだよ、そう言って二人は泣いては笑った。


