「おじさんは、なっちゃんのところ?」
「ああ。そういえば昨日は夏海を見舞ってくれたんだって?喜んでたよ、ありがとうな」
「ううん、どうせ下宿先も近いから気にしないで。ところで、おじさん…」
シュッシュッと白衣の擦れる音をさせながら、雅樹が克彦に近付き小声で言った。
「なっちゃん、気付いてる…」
息を詰まらせ、克彦は彼を見た。
「マーくん!」
「すみません。俺、信太郎の事件があった日、診療所でおじさんと市原先生の話を聞いてしまったんです」
「夏海には…」
「言ってません。言うわけない、言えるわけない…」
雅樹の辛そうな顔に、克彦も顔を歪めた。
「ここではなんだから、中に入ろう。時間はある?」
午前の診察が終わり、総合受付のあるホールは人がまばらだった。
その待合の一角に腰を下ろし、克彦は言った。
「今から主治医の先生の話があるんだ。夏海抜きでって言われてね…」
「……」
それが何を意味するのか、雅樹には理解できたようだった。
膝に置いたバッグの肩紐をいじる手が止まる。
「覚悟しなきゃ、とは思ってる。だけど、そんなに簡単には…」
言葉を詰まらせる克彦に、雅樹は苦しげに眉を寄せた。
「信ちゃんのこともあって、夏海は今ボロボロだ…」
「おじさん…」
「信ちゃんがいてくれたら…夏海のそばにいてくれたら、少しは…」
たまらず雅樹は立ち上がった。


