雅樹は夏海から視線をそらせた。
こんな彼女を見るのは辛い。
自分の身体のことよりも、信太郎のことにこんなにも心を砕いている。
「だから正当防衛でもおかしくないはず!」
「それを決めるのは、俺たちじゃないんだよ」
「マーくんは信ちゃんが刑務所に入ってもいいの?」
「いいわけないだろ!!俺だって…!俺だってあいつが罪に問われなければいいのにってずっと思ってるよ!!」
雅樹は声を荒げながら、拳で大腿を何度も打つ。
「でも、信太郎はそうじゃないんだ!それを望んでないんだよ!罰せられることを願ってるとしか思えない!」
その剣幕に、夏海は返す言葉を失ったようだった。
「実際に相手は亡くなってるんだ。その罪からは逃れられない。それに万が一正当防衛が認められて法律上何の罪に問われなくても、信太郎のことだ、きっとそんな自分を許せないままでいる。情状酌量で減刑されたとしても、あいつは納得しない。そういうやつだろ?信太郎って。なっちゃんが一番よく知ってるじゃないか!」
「だけど…」
「あいつは真正面から罪を認めようとしてるんだよ!」
雅樹はたまらずそう怒鳴った。
夏海はめまいがした。
ほんの数週間前。
武子の墓の前で頭を垂れる信太郎の姿が思い出される。
『夏海さんを僕にください…』
許しを乞うように、ひざまづいた彼。
「信ちゃん」
足下がゆらゆらと、おぼつかなくなった。
「信ちゃん…!」


