「愛してる」、その続きを君に



ドラッグストアに入ると、外とはまるで別世界のような涼しさだ。


汗をかいた身体には寒いくらいに感じられる。


夏海は妊娠検査薬の置いてあるコーナーを探して、店内を歩き回った。


信太郎は、暑いが外で待たせている。


何となく一緒に店に入りたくなかった。


彼女はコツリとサンダルのヒールを鳴らすと、足を止めた。


目線の先には何種類もの妊娠検査薬が整然と陳列し、どれも「99%以上の確かさ」とかかれている。


本当にそうなのだろうか、たかが数百円でそんなにあっさりと命が宿っている、と確定されてしまうものなのだろうか、そう思ってしまう。


今の彼女にとってはその確率が妙に高く感じられ、にわかには信じられない。


夏海はとりあえずその中の一つを手に取った。


やけに軽い。


不審に思いパッケージを見ると、「レジにて本品と交換」とある。


万引きが多発するのだろう、彼女が手にした物は空箱だった。


他のものも全て中身は入っていない。


ただでさえ、買うことにも勇気がいるのになんて手間なんだろう、と少しばかりの苛立ちを感じる。


夏海は仕方なくその空箱を持ち、男性店員ではなく女性店員のいるレジに並んだ。


自分の後ろに誰も並ばないで、と祈りながら。


前の客が去り、彼女は店員に妊娠検査薬の空箱を手渡した。


「お待ちください」と、その店員が自分のことをチラリと見た気がして、思わず前髪をさわるフリをして顔を隠す。


なんだかうしろめたかった。


できちゃった結婚だなんて言葉はもうずっと前からあるくらいだし、今は数組に1組はそういったカップルだという時代なのに。


戻ってきた店員は中身が見えないように小さな紙袋にそれを入れた。


ちょうどその時、背後に客の並ぶ気配がした。


「ポイントカードはお持ちですか?」


「いえ、持ってません」


そんなことはどうでもいいから早くして、そんな焦りが声にまざまざと表れていた。