信太郎は時に優しく、時に激しく彼女を愛する。
それとまどいながらも、夏海は愛されているという悦びに身を震わせる。
最後に優しい口づけをすると、彼女は息をするたびに上下する広い胸に顔を押し当てるのが常だった。
恵麻がいつか言っていた。
弟はいい加減なところもあるけれど、キメる時はキメるよ、と。
あの日の佐々倉家の墓の前での信太郎を思い出す。
彼はあのまま豊浜に帰ってきていたことを、夏海に知らせることなく、また恵麻のマンションに戻っていった。
だからあえて、夏海も訊こうとはせず、知らないふりをしていた。
「なぁ、ナツ?」
信太郎の心臓の音に耳を澄ましていた彼女は顔をあげた。
「なぁに?」
「来年俺が大学生になったら、何したい?」
癖のある柔らかな髪を撫でながら、彼は問う。
「岡山の美星(びせい)町に連れていってくれるんでしょ?」
「それだけ?」と彼が笑うと、規則的な胸の動きが乱れる。
「もっと他にもあるだろ?」
「あるよ。いっぱいあって全部言い終えるまでに夜が明けちゃうよ」と夏海は答えた。
「そんなに?」
信太郎もあながち嫌でもなさそうだ。
「じゃあさ、俺が合格して一番にしてほしいことは?」
そうだなぁ…と彼女は広い背中に腕を回して、抱きしめた。


