「で、恵麻お姉ちゃんは何て?」
「あいつ社内で付き合ってたやつがいたんだけど、2ヶ月ほどまえに別れたらしい。なのに、その男がしつこくつきまとうらしくて…この前はマンションの下に立ってたって」
「ストーカーっていうんでしょ、そういうの」
「警察に相談しろって言うのに、恵麻のやつ体裁気にして、行かないってきかないんだよ」
彼はまた舌打ちをした。
姉思いの信太郎。
そんな横顔を見ながら、夏海はそっと彼の手に自分の手を重ねた。
険しい顔が少し緩んだかと思うと、
「ナツ」と信太郎が彼女を抱き寄せた。
「おまえまでそんな怖がったような顔すんなよ」
「だって…」
「つまんないこと言ったな、俺」
「ううん」
「おまえは何かあったらすぐに俺に言えよ」
「わかってる」
彼女の身体を少し離して顔をのぞくと、信太郎はやっと笑顔になった。
やはり昨夜のことを思い出して、夏海はうつむく。
「なんだよ、恥ずかしい?」
「べっ別に!」
髪で顔を隠しながら答える彼女を、信太郎は強く抱きしめた。


