幼なじみって不思議だね、と夏海が腹ばいになって言った。
まどろんでいた彼はうっすらと目をあけて、なんで?と笑いながら訊く。
「だって」と夏海は彼の顔をのぞきこんだ。
「小さい頃からずっと一緒にいて、背だって私より低くて、声もどちらかといえば信ちゃんのほうが高くて澄んだ声をしていたのに、いつの間にか私が信ちゃんを見上げるようになって、その声は低く響くようになった」
彼の手の甲が夏海の頬を撫でると、
「そして今、私たちはこうなってる…」と静かに付け足した。
仰向けだった信太郎がうん、と寝返りをうつと同時に夏海を抱きしめた。
「そう考えれば不思議だな。おまえだってあの頃は胸なかったもんな」
「もう!」
彼の腕をつねろうとするも、贅肉のついていない二の腕の筋肉に阻まれて、つまむことができない。
まさしく男の腕だった。
「信ちゃんだってチビだったじゃん」
「今は182センチありますけど、なにか」
「おっきくなったね」
「おまえは?」
「160」
「ちっちゃいな」
クスクス笑いながら、信太郎が分厚い毛布を夏海の肩まで引き上げた。
何も身につけていない素肌には、柔らかな起毛素材がちょうど心地よく、暖かい。
「ね、信ちゃん。気になることがあるんだけど」
「んー?」
「駅で信ちゃんが恵麻お姉ちゃんのことを呼んだじゃん?」
「ああ」
「あの時の恵麻お姉ちゃん、なんかすっごく怖がった顔してなかった?」
彼も気になっていたのか、「明日にでも恵麻に訊いてみるよ」とだけ答えた。
「寒くないか?」
彼はもう一度毛布を引き上げる。
「うん」
「…もう寝るぞ」
「うん」
夏海はあたたかく強い胸に守られながら、目を閉じた。
彼の息づかいを額に感じながら、彼女もゆっくりと眠りに落ちていった。


