恵麻に借りたスウェットに着替えて、夏海は信太郎のベッドに腰掛けた。
少し固めのマットレス。
いつもここで寝ているんだ…そう思うと思わずそっと替えてくれたばかりだというシーツに頬を寄せた。
そしてそのままぐるりと部屋を見渡す。
勉強机にはテキストや参考書が山積みで、目に良くつく壁には時間割表が貼られている。
無造作にかけられた服が並ぶクローゼット、はちきれんばかりの本棚、そして窓際には天体望遠鏡。
相変わらずだな、と思う。
小さい頃から星が好きで、元気がないときには必ず「ほら、ナツ。見てみろ」と言って望遠鏡をのぞかせてくれた。
宇宙人に会いに行きたい、そんなことを言っては雅樹と一緒にバカにしたこともあった。
しかし、彼はその「夢」をかなえるために全力で取り組んでいる。
あの「信太郎」が。
幼い頃からずっとそばにいて見てきた彼は、「なんとかなるって」が口癖だった。
特にバスケットボールをやめてからは、何かにチャレンジすることすらなかった。
そんな彼が今は別人のように夢に向かってまっしぐらだ。
ふいに先ほどの恵麻の言葉が蘇り、胸が熱くなった。
信太郎が風呂に入っている間のことだ。
恵麻は飲み干したカップをいじりながら、こう言ったのだ。
「この前、克彦おじさんがうちに来たでしょ?たまたま私も有休とって実家帰ってたから、一緒に飲んでたのよ。そしたらおじさんね…」


