「ナツ、全然食べてないじゃん」
信太郎が手を休める。
「いいの。作るときに味見しすぎてお腹いっぱいだから」
嘘だった。
あまり胃に物を入れたくない。
昨日、診療所に薬だけでももらいに行けばよかったな、と正直思う。
「それになんか痩せたよな?」
信太郎が眉をひそめた。
「ぜんっぜん!ダイエットしたいくらいよ」
今日はなんだかよく嘘をついてしまうな、と彼女は何度も髪を撫でた。
確かにここ最近の胃の調子の悪さで、3キロ体重が減った。
余分な脂肪のついていない夏海の体はいっそう細く、頼りなげになった。
父の克彦も心配したが、「お年頃だからね」と軽くかわしている。
「まぁ腹が減ったら何か買って食おう」
ごった返すフードコート内を見渡して、彼はそう言った。
「今日は俺もリフレッシュ休暇!思いっきり遊ぶからな」
「うん」
信太郎に心配はかけたくない。
こんなにも無邪気な笑顔が目の前にあるのだ。
夏海は頬杖をつきながら、その彼の顔を見つめた。


