信太郎と夏海は、また新しいスタートを切った。
「信ちゃん、お誕生日おめでとう。ハタチだね、オトナになった気分はどう?」
『おお、特に何もないけど。まぁオトナの言うことはちゃんと聞けよ、お嬢ちゃん』
「なにそれ、ただの変なオヤジじゃん。私だって夏になればハタチでオトナの女よ」
『へいへい』
「じゃ、私仕事に行ってくるね」
『おう』
彼は決して自分から電話を切ろうとはしない。
だから夏海が必ず先にボタンを押す。
些細なことだが、そんな信太郎がかわいく、そして愛しく思えて仕方ない。
こんな毎朝のモーニングコール。
今日は信太郎の誕生日なので、特別な感じがする。
彼はもう1年予備校に通うことになった。
最後にもう一度チャンスをください、と両親を説得したらしい。
今年も予備校近くの恵麻のマンションで居候をしている。
去年と違うところは、毎日朝晩と2回、必ず電話をし、お互いの声を聞くということだった。
「夏海、今夜は父さん飲み会だから」
靴を履く娘に、克彦は猪口で酒を飲む仕草をした。
おやじくさいなーと笑うと、「はいはい、だから今日は夕飯はいらないんだね」と返す。
「信ちゃんの家で飲むから」
「もーあんまり飲んで迷惑かけないでよね。研一おじさんと飲むといっつもベロンベロンなんだから」
「そんなに心配ならおまえも来るか?未成年っても、あとちょっとでハタチだろ」と言われ、無意識のうちに彼女は胸元を押さえていた。


