「愛してる」、その続きを君に


波の音が何の遠慮も気遣いもなく信太郎の耳をかすめていった。


もうどうにでもなれよ、彼はそう呟いた。


所詮自分にはK大なんて無理なことだったのだ。


欲張りすぎた、身の程知らずだった。


自分を卑下する言葉ばかりが次々に頭に浮かんでくる。


趣味だけで天体観測をしていればよかった、そうすれば夏海をあんなふうに傷付けることはなかったのに。


きれいな弧を描く砂浜で、信太郎は朽ちかけた流木に腰掛け、足を投げ出した。


ついさっきまで遠かった海が、今は彼の近くまで迫っていた。


もう何時間、ここでこうやっているのだろう。


波が信太郎を慰めるように打ち寄せてくる。


もう少ししたら、その波がこのスニーカーを濡らすだろう。


「おまえだけだよ、俺にこうやって寄り添ってきてくれるのは」


自嘲気味に笑うと、彼は頭を抱えた。


これからどうしよう、などという考えはなかった。


ただただ焦燥感でいっぱいだった。


波がこの体ごとさらっていってくれたらいいのに、そんなことを思い始めていた。


彼がそうやってひたすら波の音を聞いていると、それに微かに聞き覚えのある声が混じっている気がした。


空耳だと耳を押さえるも、次ははっきりとその声が聞こえた。


「信ちゃん…!」


咄嗟に顔を上げると、砂に足を取られながら今にも泣き出しそうな顔の夏海が走ってくる。


「信ちゃん!」


「ナツ…」


「こんなとこで何やってんのよ!」


そう叫びながら走り寄ってくると、彼の前に立った。


波がもうそこまで来ていて、彼女のスニーカーはずぶ濡れだ。


しかし、そんなことを気にすることなく、額に汗を滲ませた彼女は信太郎の前で膝をついた。


「…信ちゃん」


無表情で青白い信太郎の頬に、恐る恐る手を伸ばす。


「こんなに冷たくなって…」


そう言って慌てて着ていたカーディガンを脱ぐと、彼の肩にかけた。


そんな彼女を信太郎は目で追う。


「…ナツ」


「なあに?」


幼子を気遣うような優しい声だった。