仕事を終えて自宅で洗濯物を取り込んでいる時だった。
部屋の奥で電話が鳴っている。
「はいはい」そう電話に呼びかけて、祖母の武子もこんなふうに言ってたなぁと思い出し、思わず笑ってしまった。
まるで年寄りじゃん、そう呟いて受話器を取る。
「あ、おばさん?こんにちは、どしたの?」
信太郎の母の天宮亜希子からだった。
信太郎が昼過ぎから家を出たまま、連絡がつかなくなっているらしい。
もしかしてそちらにお邪魔しているのではないかと思い連絡した、という。
「ううん、来てないけど…」
夏海は外を見た。
まだ日は落ちてはおらず、明るい。
もう子どもじゃないんだし、そんなに心配しなくても…と言おうとして、受話器の向こうから聞こえてきた声に、夏海は言葉が継げなくなってしまった。
『今日後期試験の発表でね…ダメだったから余計に心配で…他に行きそうなところ知らないかしら?』
夏海はしきりに指の爪を噛みだした。
心当たりがあった。
きっと彼はそこにいる。
傷ついた心で、たったひとりでそこに…
「…信ちゃん」乾いた唇がそう動いた。
『え?なっちゃん?』
「信ちゃん!」
彼女はたまらず受話器を放り出すと、外へ飛び出した。


