仕事を終え、夏海は恐る恐る携帯を見るも案の定、何の連絡もなかった。
とぼとぼと自転車置き場に向かう途中、大きな人影が彼女の前に立ちはだかる。
「信ちゃん…」
薄暮の中でも、彼の顔色が悪いことがわかった。
「連絡しなくてごめん」
ううん、夏海は首を横に振ったものの、どんな顔を向けていいのかわからずにうつむく。
「ごめん」
そのごめん、が連絡をしなかったことに対するものなのか、それとも…
彼女は顔をあげられなかった。
「まだ後期試験があるから…それに賭けてみるよ」
ああ、やっぱりだめだったんだ…
夏海の目から涙が溢れそうになった。
この涙には何の意味があるのだろう、どうして自分は泣きたいのだろう。
頑張った信太郎の努力が報われずに、気の毒だから?
それともひたすら会うのを我慢して我慢して、我慢した自分への慰め?
「後期試験は15日なんだ」
「そっか…」
「ごめんな」
「なんで謝るのよ、まだチャンスはあるんだから」
夏海は精一杯の笑顔で彼を見上げた。
「ほーら、そんな顔をしないで」
彼女の小さな拳が、信太郎の胸を軽く突いた。


