夕日が建ち並ぶビルの窓ガラスを一様に紅に染めている。
見上げるほどの高い建物。
夏海の住む豊浜にこんなに高いビルはない。
せいぜい小学校の3階建てがいいところだ。
高鳴る胸をどうにか抑えながら、夏海は信太郎の通う予備校の前で彼が出てくるのを待っていた。
この前のゴールデンウィークに会ったきりなのだから、3ヶ月ぶりだ。
ショートボブにした髪はほんのり色づき、ますます彼女を女らしく見せていた。
果たして彼はどう言ってくれるのだろうか。
似合う、そう言ってくれるのだろうか。
ううん、そう言ってほしい…。
タン、タン、タンと少し間を置いて階段を下りてくる足音が聞こえた。
信太郎のものだとすぐにわかる。
夏海は顔をあげて、小さく手を振った。
「おっ、髪切ったのか」
うん、と期待をこめて頷くが、それ以上彼は何も言ってくれなかった。
似合わなかったのかな、そう思いつつも
「出てきてよかったの?」と訊く。
「今は夏期講習中だし、この後は授業入ってないからいいんだよ。それよりおまえはいつまで仕事休み?」
「明日まで。偉い人から休みを取っていくから、新米の私は希望した通りの休みはなかなか難しいのですよ」
そんな彼女の言い方に、なるほど、と信太郎はえくぼを作った。
それがなんとも愛しくて、懐かしくて、今にも抱きつきたい。
「ここじゃ、なんだからさ」
信太郎がそう言って、二人はファミレスで夕食をとることにした。
向かい合って座るも、久々に会うせいか、何度か目のやり場に困り窓の外を眺めたりした。
しかしすぐによそよそしさは消え、いつもの二人のように冗談を言い合うようになった。
信太郎は雅樹とも頻繁に連絡を取り合っているらしく、彼の様子も詳しく話してくれた。
彼らのそんな変わらぬ仲を、夏海は嬉しく思う。
「ナツはどうなんだよ、仕事」
「まぁ、なんとか。体育会系の仕事が多いんだけどね」
「なんだそれ」
おかしそうに笑う信太郎に、彼女もつられて笑った。


