彼らが別々の道を歩み始めて初めての連休、ゴールデンウィーク。
雅樹も信太郎も実家のある豊浜に帰ってきた。
顔を合わせても、相変わらず雅樹は二人に遠慮してさっさと家に帰っていく。
夏海と信太郎は何をするでもなく、豊浜の誰もいない海岸で流木に腰掛け、ただ海を見ていた。
5月の陽射しはには暑さはないものの、夏に負けないくらいの眩しさがある。
それが海に反射してまるで金色に包まれたような感覚になった。
渚に足を投げ出し、ただ波を眺める。
打ち寄せる波は、ふたつとして同じものはない。
時に荒々しく、時に優しく浜辺についた足跡を洗っていく。
大きな貨物船が水平線を綱渡りするかのように、ノロノロと進んでいく。
彼らは幾度となく口づけを交わし、会えない寂しさを埋めようとした。
しかしどんなに唇が重なろうとも、離れた瞬間には不安が襲ってきた。
会いたい、寂しい。
この言葉を言えたら、どんなに気が楽になるだろう。
何度も口をついて出てきそうな言葉を、彼女はぐっと抑えた。
頬を包む彼の手のぬくもりに涙をこらえ、薄手のシャツから透けてみえる広い胸元に顔を押し当てたい衝動を必死にがまんした。
彼らに与えられた束の間の時間はあっという間に終わる。
信太郎の乗った電車を見送りながら、夏海はまた彼のいない「日常」へ戻る焦燥感でいっぱいだった。


